胃炎(いえん)
2015年3月20日 / ☆小鳥の病気
嘔吐や体重減少を主な症状とする胃炎は、さまざまな原因で多くの鳥種でよく発生します。
原因
マクロラブダスやカンジダなどの真菌や細菌、寄生虫などの感染症や、鉛中毒、薬剤や毒物などの異物摂取など、多くの原因が胃炎をひきおこします。中年齢以上では、胃癌による胃炎も発生します。
症状
軽い胃炎では、無症状のことが多いですが、糞便検査で未消化やX線検査でグリッドの消失がみられることがあります。進行すると食欲低下、膨羽、吐き
気などの症状が出るようになります。
を閉じて動かなくなり、嘔吐、脱水症状、粒便、
胃出血により黒色の下痢をおこします。痛みの
ため前傾姿勢になることがあります。
胃炎の症状は良くなったり悪くなったりを繰
り返すため、病院に行くのが遅れることが多い
です。
治療が遅れると、胃炎は胃潰瘍へ進行し、やがて胃に穴が開いてしまいます。こうなると鳥は容態の急変や急死をおこします。慢性胃炎では、胃拡張や胃の壁が固くなり、慢性的な消化不良や嘔吐によってゆっくり衰弱していきます。
診断
吐き気や嘔吐をおこす病気は胃炎以外にもたくさんあるため、糞便検査や血液検査、Ⅹ線検査で総合的に診断します。症状がない場合でも、顕微鏡的消化不良やグリッドの消失で早期発見が可能です。
写真:胃炎症状で亡くなったセキセイインコには
胃潰瘍(〇部)ができていました。
写真:顕微鏡的な消化不良(デンプン粒)
治療
原因がわかってる場合は、まず原因に対する治療をしっかり行います。胃炎症状が軽い場合には、自宅で、吐き気止めや胃粘膜保護薬を与えますが、症状が重い場合や食欲不振で体重減少がある場合には入院して輸液や強制給餌が必要です。黒色便=胃出血がある場合は、集中的な治療を行っても命を落とすことがあります。
©みやぎ小鳥のクリニック
*本解説は、下記の参考文献および当院での実績を基に構成・編集したもので す。出典表記のない図、写真はすべて当院オリジナルです。
【参考文献】
・小嶋篤史著「コンパニオンバードの病気百科」(誠文堂新光社)
・海老沢和荘著「実践的な鳥の臨床」NJK2002-2007(ピージェイシー)
・Harrison-Lightfoot著「Clinical Avian Medicine VolumeⅠ-Ⅱ」