毛引き症(けびきしょう:Feather Picking) 羽咬症(うこうしょう:Feather Chewing)
2015年3月23日 / ☆小鳥の病気
毛引き症、羽咬症は、病名通り、自分の毛を引き抜いたり咬みちぎる行為を意味します。皮膚をつついて傷つける自咬症も、類似する病気群のひとつとして考えられています。
原因
毛引き症・自咬症の発生原因として①生前要因(遺伝)、②生後要因(母親との関係)、③現況(現在の状況)の3つが考えられています。現況の原因としては以下のものが考えられています。
①ストレス
③感染症
④アレルギー
⑤寄生虫
⑥中毒症
⑦甲状腺機能低下症
⑧皮膚炎・羽包炎
⑨栄養失調
⑪水浴び・日光浴不足
など、いろいろ。
症状
・異常に羽毛を引っこ抜く(くちばしが届かない頭、顔の羽毛は正常)
・羽毛を咬みちぎる
・皮膚を咬んで傷つける(自咬症)
診断
毛引き症・羽咬症は、その外観や飼い主さまからの聞き取りから比較的簡単に診断可能ですが、羽毛に異常をおこす病気は他にもあるので、上記原因に挙げられたような基礎疾患ないかを十分に検討します。
治療
毛引き症・自咬症の治療はとても難しいものです。発症原因の1/3は遺伝、1/3は母鳥との関係とにあるといわれ、現況に対する治療では改善が困難なのです。また現況における原因が上記のように多種多様ですので、それぞれの原因を見つけることが大切です。まず、生活環境を見直し、ストレスがないかを確認します。そして、健康診断を受けて身体的な病気がないかを調べます。原因と思われる異常があれば改善、治療を行います。
しかし、実際には原因がはっきりしない場合が多く、その場合は、抗不安薬や安定剤を服用して毛引き行為をおさえたり、発羽に必要なアミノ酸を与えて症状の改善に努めます。毛引きが激しい場合や、皮膚を咬んで傷つける(自咬症)の場合は、首の周りエリザベスカラーを装着して防ぐことがあります。
毛引き症の治療は、とても時間がかかり、完治させるのが難しい場合が多いのですが、悪化しないように、自咬症に進行しないように、とにかく根気強く続けることが大切です。毛引き症をおこす鳥は、頭のいい鳥です。ですので、インコ、オーム類の賢いコによく発生します。鳥かごから出て、人と接する時間が多いほど発病します。このような鳥は、自分を人間だと思っていて、実は人間でない自分にストレスを感じています。苦しんでいるあなたの小さな家族のために、とにかくあきらめずに治療を続けてください。
予防
毛引き症の原因は、遺伝や母親との関連が大きく、予防は難しいと思われます。栄養や、発情予防、ストレスのない生活を心がけて、定期的に動物病院で健康チェックを受けることが結果的に毛引き症・自咬症の予防につながると思われます。
©みやぎ小鳥のクリニック
*本解説は、下記の参考文献および当院での実績を基に構成・編集したもので す。出典表記のない図、写真はすべて当院オリジナルです。
【参考文献】
・小嶋篤史著「コンパニオンバードの病気百科」(誠文堂新光社)
・海老沢和荘著「実践的な鳥の臨床」NJK2002-2007(ピージェイシー)
・Harrison-Lightfoot著「Clinical Avian Medicine VolumeⅠ-Ⅱ」