卵管蓄卵材症(らんかんちくらんざいしょう)
2015年3月20日 / ☆小鳥の病気
卵管蓄卵材症とは、卵管内に卵を作るための材料が蓄積し、卵管が膨大した状態です。卵材の状態や量は様々で、比較的卵白・卵黄に近い状態のものから、ゼリー状のもの、卵殻膜が重なって塊になったもの、卵殻腺内で結石状になったものなどがあります。卵塞症との違いは、卵管内の卵材は、正常な大きさの卵にはなっておらず、様々な形状の卵材が停滞していることです。
卵管蓄卵材症はセキセイインコによく発生し、オカメインコ、ラブバードにも時折みられます。
原因
雌性生殖器疾患であるため、発情が関係していることが考えられますが、実際の発症のしくみは解明されていません。卵になれなかった卵材が徐々に蓄積して、このような状態になると考えられていますが、定かではありません。
症状
腹部の膨らみがみられ、慢性例では腹壁は黄色化して腹壁ヘルニアと併発していることがあります。卵巣機能は正常であるため、慢性的に発情していることが多いです。卵材が体腔内に大量に漏れない限り元気ですが、炎症がおきると食欲低下、膨羽、傾眠がみられます。呼吸器の圧迫のため、呼吸困難を示す場合があります。卵材が体腔内に漏れ、卵材性腹膜炎を起こすと、急速に状態が悪化します。
診断
診断には、X線検査、超音波検査が有効です。X線検査は、単純撮影および造影撮影を行います。単純撮影では、卵管内に卵殻等石灰化があれば卵材の蓄積が確認できますが、ない場合には体腔内のコントラストが低いため卵材をはっきりと確認できないことが多いです。消化管造影撮影では、膨大した卵管により腸管が右体側へ変位していることが特徴です。
X線不透過性の卵材(矢印)↑ 摘出された卵管と卵材(卵黄成分)↑
治療
根本的な治療は、外科的に卵管を摘出術することです。何らかの理由で手術を回避する場合には、発情抑制剤や消炎剤、抗菌剤等による保存療法で比較的長期に管理することが可能なケースもあります。
予防
発情との関連が指摘されていて、日常的な発情予防が大切です。
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*本解説は、下記の参考文献および当院での実績を基に構成・編集したもので す。出典表記のない図、写真はすべて当院オリジナルです。
【参考文献】
・小嶋篤史著「コンパニオンバードの病気百科」(誠文堂新光社)
・海老沢和荘著「実践的な鳥の臨床」NJK2002-2007(ピージェイシー)
・Harrison-Lightfoot著「Clinical Avian Medicine VolumeⅠ-Ⅱ」