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マクロラブダス症 (AGY,メガバクテリア感染症)

2015年3月20日 / ☆小鳥の病気

 マクロラブダス(AGY、メガバクテリア)は

マクロラブダス症1

細長い形をした真菌(カビ)の一種です。最近

までメガバクテリアと呼ばれていました。1

982年にアメリカで発見され、現在では世

界中で発生がみられています。

 多くの鳥種で感染が確認されていますが、特

に症状が重いのはセキセイインコで、急性に

死亡する例も少なくありません。最近ではオ

カメインコでも重症化する例が増えてきました。マクロラブダスは主に胃の粘膜に侵入し、何らかの理由で小鳥の免疫が低下すると増殖して、嘔吐や未消化便などの胃炎症状を示しながら衰弱していきます。

 

原因                                                                                                 

 感染鳥の糞に排泄された菌体の摂取によって簡単に感染します。実際はヒナの時期に親鳥から感染を受けたものがほとんどと思われます。

 ペットショップで購入した場合は、環境の変化によるストレスで発症するケースがよくあります。すでに世界中に蔓延していて、日本でもAGYフリーのブリーダー(繁殖元)を探すのは困難といわれています。

 

症状                                                                                                 

 健康な個体は、免疫力でAGYの増殖を抑えているため、無症状で経過することがほとんどですが、ストレスで免疫力が落ちた場合や、他の病気の経過中に合併症として発病することがよくあります。発病した場合、急性型では、元気な鳥が突然嘔吐や黒色便の胃炎症状を示し、体を膨らませて数日以内に死亡します。慢性型の場合は吐き戻しや未消化便・粒便などの消化器症状を表しながら徐々に痩せていきます。体重が25g以下になると回復困難となることが多いです。

 

診断                                                                                                 

 糞便を顕微鏡で観察して、マクロラブダスの細長い菌体を発見します(上部写真)。

 

治療                                                                                                 

 検査でAGYが発見され次第、抗真菌薬の注射と内服薬を投与します。内服薬のみでは、生き残った菌が耐性化するおそれがあるので、できるだけ注射による投薬を行います。すでに胃炎の症状が出ている場合には、制吐剤や胃粘膜保護剤を併用します。投薬は、1週間おきの検査で菌が完全に消失するまで続けなければなりませんが、当院実績では注射を1週間おきに3回、内服4週間の治療で除菌成功率は96%です。

 投薬治療を行って、糞便に菌が確認されなくなっても、胃炎症状が持続する場合は、徐々に衰弱し致命的となるケースも少なくありません。またマクロラブダス感染後の慢性胃炎が胃癌発生の大きなリスクファクターとして指摘されています。投薬と同時に免疫力を上げるため保温や、栄養補給も重要です。

 AGYはその他の内科疾患や栄養障害に併発している場合も多く重症化しやすいため、治療と同時に基礎疾患の検索や栄養管理がとも重要です。

 AGY感染を予防する方法はありませんが、ヒナ購入時の検査、そして定期的に健康診断をうけて、AGYが見つかったら症状がなくても投薬して確実に駆除することが一番の予防方法といえます。

 AGY感染症には、まだまだ不明な点が多く、今後それらが解明されることが期待されます。

                       ©みやぎ小鳥のクリニック

 

 

*本解説は、下記の参考文献および当院での実績を基に構成・編集したもので す。出典表記のない図、写真はすべて当院オリジナルです。

【参考文献】

・小嶋篤史著「コンパニオンバードの病気百科」(誠文堂新光社)

・海老沢和荘著「実践的な鳥の臨床」NJK2002-2007(ピージェイシー)

・Harrison-Lightfoot著「Clinical Avian Medicine VolumeⅠ-Ⅱ」