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卵管嚢胞(らんかんのうほう)または             卵管の嚢胞性過形成(らんかんののうほうせいかけいせい)

2015年3月20日 / ☆小鳥の病気

 「嚢胞」とは、内部に液体を満たした袋状のできもののことです。小鳥の卵管には嚢胞が発生しやすく、その多くは多発性で、時にはブドウ状に大量に発生します。

 

原因                                                                                                 

 過剰な発情が、粘膜の異常な過形成をおこすものと考えられてます。

 

診断                                                                                                 

 消化管造影検査にて圧迫による消化管の右方変位を確認した後、超音波検査ライティングによって診断可能です。

 

症状                                                                                                 

 小さな嚢胞は一般に無症状で、発見されずに見過ごされるケースがほとんどと思われます。嚢胞が大きかったり、多数発生すると、腸を圧迫して排便障害や、呼吸器を圧迫して呼吸困難を示すことがあります。

 

治療                                                                                                 

 完治には卵管摘出手術が必要ですが、緩和的保存療法として内科的治療による管理が選択されるケースが多いです。発情抑制剤の使用を中心として、発情を起こさないような生活環境の改善が不可欠です。小さな嚢胞は長期的な内科的治療で消失することもあります。

 

卵管嚢胞1

手術で摘出された多発性の卵管嚢胞

 

予防                                                                                               

 卵管嚢胞の発生は発情と深く関連していると考えられているので、日常的な発情予防がとても大切です。

 

症例

セキセイインコ、6歳、お腹のふくれでご来院されました。

    卵管嚢胞2

 

消化管造影をしてみると、卵巣が異常に大きくなって(矢頭)、

腸が圧迫されてお腹がふくれていました(矢印)。

このままでは、今後呼吸困難や排便障害がおきてくるので

手術することにしました。

 

卵管嚢胞①

 

手術で卵管嚢胞を摘出し、発情予防治療をしたところ

卵巣が小さくなっておなかの膨らみもなくなりました。

卵管嚢胞4

                       ©みやぎ小鳥のクリニック

 

 

*本解説は、下記の参考文献および当院での実績を基に構成・編集したもので す。出典表記のない図、写真はすべて当院オリジナルです。

【参考文献】

・小嶋篤史著「コンパニオンバードの病気百科」(誠文堂新光社)

・海老沢和荘著「実践的な鳥の臨床」NJK2002-2007(ピージェイシー)

・Harrison-Lightfoot著「Clinical Avian Medicine VolumeⅠ-Ⅱ」

卵管蓄卵材症(らんかんちくらんざいしょう)

2015年3月20日 / ☆小鳥の病気

 卵管蓄卵材症とは、卵管内に卵を作るための材料が蓄積し、卵管が膨大した状態です。卵材の状態や量は様々で、比較的卵白・卵黄に近い状態のものから、ゼリー状のもの、卵殻膜が重なって塊になったもの、卵殻腺内で結石状になったものなどがあります。卵塞症との違いは、卵管内の卵材は、正常な大きさの卵にはなっておらず、様々な形状の卵材が停滞していることです。

卵管蓄卵材症はセキセイインコによく発生し、オカメインコ、ラブバードにも時折みられます。

 

原因                                                                                                 

 雌性生殖器疾患であるため、発情が関係していることが考えられますが、実際の発症のしくみは解明されていません。卵になれなかった卵材が徐々に蓄積して、このような状態になると考えられていますが、定かではありません。

 

症状                                                                                                 

 腹部の膨らみがみられ、慢性例では腹壁は黄色化して腹壁ヘルニアと併発していることがあります。卵巣機能は正常であるため、慢性的に発情していることが多いです。卵材が体腔内に大量に漏れない限り元気ですが、炎症がおきると食欲低下、膨羽、傾眠がみられます。呼吸器の圧迫のため、呼吸困難を示す場合があります。卵材が体腔内に漏れ、卵材性腹膜炎を起こすと、急速に状態が悪化します。

 

診断                                                                                                 

 診断には、X線検査、超音波検査が有効です。X線検査は、単純撮影および造影撮影を行います。単純撮影では、卵管内に卵殻等石灰化があれば卵材の蓄積が確認できますが、ない場合には体腔内のコントラストが低いため卵材をはっきりと確認できないことが多いです。消化管造影撮影では、膨大した卵管により腸管が右体側へ変位していることが特徴です。

 卵管蓄卵材症1    卵管蓄卵材症②

  X線不透過性の卵材(矢印)↑    摘出された卵管と卵材(卵黄成分)↑

卵管蓄卵材症③    卵管蓄卵材症④

摘出した卵管の膨らんだ部分に 矢印 卵材が2つ詰まっていました!

 

治療                                                                                                 

 根本的な治療は、外科的に卵管を摘出術することです。何らかの理由で手術を回避する場合には、発情抑制剤や消炎剤、抗菌剤等による保存療法で比較的長期に管理することが可能なケースもあります。

 

予防                                                                                                 

 発情との関連が指摘されていて、日常的な発情予防が大切です。

                       ©みやぎ小鳥のクリニック

 

 

*本解説は、下記の参考文献および当院での実績を基に構成・編集したもので す。出典表記のない図、写真はすべて当院オリジナルです。

【参考文献】

・小嶋篤史著「コンパニオンバードの病気百科」(誠文堂新光社)

・海老沢和荘著「実践的な鳥の臨床」NJK2002-2007(ピージェイシー)

・Harrison-Lightfoot著「Clinical Avian Medicine VolumeⅠ-Ⅱ」

卵塞症(らんそくしょう;卵づまり、卵秘: Egg Binding)

2015年3月18日 / ☆小鳥の病気

 卵塞症は、お腹の中に卵があるのに、産卵できない状態です。この状態が続くと、体力消耗や排便障害から、生命に危険を及ぼす可能性があるために早急に治療を始めなくてはなりません。卵塞症には停滞型と難産型がありいずれも一年中発症がみられますが、寒暖の差が大きい晩秋から早春には特に多く発生します。 卵塞症1

原因


  持続発情による過産卵、カルシウム・ビタミンの不足や寒さによる卵収縮不全、卵管口の弛緩不全などが主な発生要因と考えられます。

  過産卵は、体内の組織のカルシウム量を減少させ、卵管が十分に収縮しないために、卵を排出できなくなります。また、殻をもたない軟卵が作られて停滞してしまいます。卵が卵管内に停滞している時間が長くなると、卵殻が卵管粘膜と癒着して炎症をおこし、さらに産卵が困難になってしまいます。

 

症状


  難産型は、元気だった鳥が急に膨らんで動かなくなったり、カゴの隅でうずくまるような症状が見られます。水をよく飲むために水分の多い糞をするようになります。呼吸が荒くなり、体力の消耗が激しい場合は発生から24時間以内に落鳥する場合もあります。

 停滞型は難産型より症状が軽く、お腹の膨らみが見られるだけですが、排便障害から体力が低下したり、卵管炎や腹膜炎の続発症を起こす可能性があるので、注意が必要です。

 

治療


  卵塞症が判明したら、まずすぐに30~33℃に保温します。 1日に1回短時間35℃まで加温します。保温のみで産卵する場合もありますが、通常はブドウ糖やカルシウム剤、産卵促進剤の注射が必要となります。

 停滞型の卵塞症は注射による内科的な治療で85%以上が産卵しますので、やみくもに手で押したり力ずくで卵を出してはいけません。内科的治療で効果がない場合や難産型では人工的な処置が必要となります。卵が排泄孔近くまで降りてている場合は、用手にて卵の除去を試みますが、卵がより上部にに停滞している場合は卵管を切開する手術 (帝王切開)を行う必要があります。

 

予防


 1度卵塞症をおこした鳥は、何度も繰り返す傾向にあります。1回の卵塞で命を落とすこともあります。日常生活での発情予防や、場合によっては薬によって産卵停止させることが大切です。

                       ©みやぎ小鳥のクリニック

 

*本解説は、下記の参考文献および当院での実績を基に構成・編集したもので す。出典表記のない図、写真はすべて当院オリジナルです。

【参考文献】

・小嶋篤史著「コンパニオンバードの病気百科」(誠文堂新光社)

・海老沢和荘著「実践的な鳥の臨床」NJK2002-2007(ピージェイシー)

・Harrison-Lightfoot著「Clinical Avian Medicine VolumeⅠ-Ⅱ」

 

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