鉛中毒症(なまりちゅうどくしょう)
2015年3月20日 / ☆小鳥の病気
鉛中毒症は口から摂取した鉛の毒性によって起こる病気です。
鉛中毒症は一般的には認知度の低い疾患で
治療が遅れると数日で死亡する恐い病気です
が、診断がつけば特効薬の解毒剤があるので、
ご家庭で鳥の体調の異変を見逃さず、いかに
早く病院に連れていけるかが重要です。
好奇心旺盛なオカメインコに多発し、次に
セキセイインコ、コザクラインコ、モモイロインコに多くみられます。
原因
生活環境中にある鉛を含んだ物をかじって食べることで発症するため、かごから出るすべてのインコに発症の可能性があります。鉛というとピンとこない人も多いと思いますが、意外にも身近にあるいろいろな物に鉛は含まれています。例えば、原因として多いのが、カーテンの下部に内蔵されているオモリ、家具などの塗料、〇国製雑貨、ステンドグラス(接合部)などなどです。特に安く売られている〇国製の雑貨やおもちゃには鉛が多く含まれることで度々問題になっています。
症状
元気だった鳥が急に嘔吐し始め、元気がなくなり食べなくなります。糞が独特の濃い緑色になり、黄~緑色の尿酸や尿を排泄することもあります。体温が低下して膨羽し、腎臓障害がおこると血尿がみられます。
ふるえやけいれんなどの神経症状が出る場合があり、回復した後も脚の麻痺が残ってしまうことがあります。
写真:ライムグリーン色の尿酸
診断
X線検査で消化管内の金属片が写っていれば診断は簡単です。しかし、すでに鉛が糞とともに排泄されている場合には診断が難しいため、症状から鉛中毒が疑われるときは、試しに解毒剤を注射してその効果で診断します。
砂肝(スナギモ)内に金属片がくっきり見えます(矢印)。
治療
鉛中毒が疑われたらすぐに解毒剤を注射します。解毒剤の注射が早ければ早いほど救命率は上がります。次いで保温を開始し、血液検査の結果を見たうえで状態に応じて輸液、制吐剤、胃腸薬、強肝剤、抗けいれん薬、尿酸排泄剤などを使用します。
予防
完全な予防法は、鳥をかごから出さないことです。しかし、あまりにも現実的でないため、環境中に怪しいものを置かないことです。特好奇心旺盛で何でもかじってしまういたずらっ子は常に危険があります。中でもカーテンには絶対近づけないようにしましょう。鉛中毒を発症した鳥たちの飼い主の多くは、「部屋に鉛はない」、「心当たりがない」と言います。それだけ実際は「鉛」はとても身近な存在だということなのだと思います。
付録:鉛中毒をおこす可能性がある日用品
・おもり(カーテン、おもちゃ、釣り、ダイビング、タイヤホイールなど)
・ベルの鳴子 ・バッテリー ・はんだ ・銃弾 ・家具の塗料
・金網 ・亜鉛防錆剤 ・ワインのボトルフレーム ・電球の基部
・有鉛ガソリンの煙 ・一部の陶器 ・輸入雑貨 ・アクセサリー
・汚染されたカトルボーン ・漆喰 ・ステンドグラス(接着部)
・一部の潤滑油
©みやぎ小鳥のクリニック
*本解説は、下記の参考文献および当院での実績を基に構成・編集したもので す。出典表記のない図、写真はすべて当院オリジナルです。
【参考文献】
・小嶋篤史著「コンパニオンバードの病気百科」(誠文堂新光社)
・海老沢和荘著「実践的な鳥の臨床」NJK2002-2007(ピージェイシー)
・Harrison-Lightfoot著「Clinical Avian Medicine VolumeⅠ-Ⅱ」